2025/03/27
保護中: 1)鼻咽腔閉鎖機能 Velopharyngeal functionについて
1.鼻咽腔閉鎖 Velopharyngeal closureとは
鼻腔と口腔は口蓋によって隔てられているが、後方は咽頭によってつながっている。この交通路を鼻咽腔とよび、前壁は軟口蓋鼻側粘膜、後壁は咽頭後壁、側壁は咽頭側壁でつくられている。そして鼻咽腔はこれらの壁に囲まれた円筒状をなしている。安静鼻呼吸時には鼻咽腔は完全に弛緩して、解放している状態であるが、嚥下時やブローイング時には完全に閉鎖し、発音時には必要に応じて閉鎖される。これによって、呼気あるいは飲食物が鼻腔へ流入することが防がれる。これを鼻咽腔閉鎖という。
2.鼻咽腔閉鎖の運動様式
正常な鼻咽腔は、開放の状態からやや狭小化した状態を経て、完全に閉鎖した状態まで、連続的に面積を変化することができる。完全に閉鎖した状態においては、さらにその閉鎖の強度(閉鎖圧)が必要に応じて調整される。すなわち、鼻咽腔運動は、開放・中間位・閉鎖という単純な段階的なものではなく、面積と閉鎖の強度を連続的に変化しうる運動である。
3.鼻咽腔閉鎖機能Velopharyngeal functionとは
正常な音声表出には、口腔と鼻腔との遮断と交通が適切に営まれることが重要である。鼻音表出時には、口腔と鼻腔が交通し、呼気が鼻腔へ流出する。閉鎖性子音表出時には、口腔と鼻腔は遮断され、呼気はすべて口腔から流出する。このように、口腔と鼻腔との交通と遮断を語音に応じて適切に制御する運動を鼻咽腔閉鎖機能という。
鼻咽腔閉鎖機能不全が軽度であれば、表出音声への影響は少なく、聴取者にはあまり違和感を与えることはない。重症であれば、語音明瞭度、音質、blowingや吸綴、嚥下機能などに支障をきたすこともある。
4.構音運動としての鼻咽腔閉鎖
1)発音時の呼気による口腔内圧上昇
2)共鳴腔の変化
これらに関与し、とくに口腔内圧の形成は破裂音・摩擦音の子音形成に必須の条件となっている。
5.口蓋裂言語
1)開鼻声:口腔と鼻腔とが通じているために起こる共鳴の異常
2)構音障害:口腔内圧が十分に上がらないために起こる(呼気鼻漏出による)
子音の鼻音化や弱音化など
6.構音障害の種類
1)鼻咽腔閉鎖不全に関連する構音障害
子音の鼻音化や弱音化、声門破裂音、咽頭破裂音、咽頭摩擦音
2)鼻咽腔閉鎖不全に関連が少ない構音障害
口蓋化構音、側音化構音、鼻咽腔構音、その他の置き換え、省略、歪み
7.鼻咽腔閉鎖機能の検査法
1)単純な検査法
口腔内診査、吹き出し検査、音声言語の聴覚判定
2)映像法
X線検査(頭部X線規格写真)、X線テレビ撮影、内視鏡検査、超音波検査
3)その他
音圧を利用(ナゾメーター)
空気力学的検査(フローネイザリティグラフ)
筋電図による検査
鼻咽腔閉鎖強度の測定
音響学的分析(サウンドスペクトログラフ)
鼻咽腔閉鎖機能の内視鏡検査は愛知学院大学歯学部附属病院口唇口蓋裂センターにて受けることが出来ます。4歳くらいからでも可能なので、開鼻声や言葉でお悩みの方は、病院センターへご相談下さい。
(愛知県名古屋市千種区末盛通り2-11
TEL:052-759-2111(代)
2019年7月26日名古屋で開催された、第59回日本先天異常学会学術集会
13th World Congress of The International Cleft Lip and Palate Foundation CLEFT2019【合同開催】
にて、「Nasoendoscopic assessment of velopharyngeal function of cleft palate」を講演しました。
2015年5月14日大阪で開催された、第19回口蓋裂公開勉強会にて、「鼻咽腔閉鎖機能不全のファイバー所見」を講演しました。
2012年5月17日広島で開催された、第16回口蓋裂公開勉強会にて、「ファイバースコープの手技と診断のコツとポイント」 を講演しました。